CASE 03

アレルギー×食品開発

アレルギーに悩む子どもと
家族を救いたい——。
全国に共創の輪が広がる食品開発プロジェクト。

榎本薬品、神戸市立医療センター中央市民病院、兵庫県立こども病院ほか

STORY 01

アレルギー専門医の発想から生まれた
食物アレルギー児に有用な食品

1歳児の10人に1人が発症するといわれる食物アレルギー。有効な治療法として原因食物を一切口にしない「食物除去療法」が知られていますが、ここ十年余り、発症しない程度の量のアレルゲン(原因食物)を意図的に摂取して完全除去ではなく、最低限の食物除去を行う新たな治療法が多くの医療機関で採用されています。

しかし専門医の食事指導を厳格に守って食事をつくるのは、共働き家庭の多い現代では親の大きな負担。そこで榎本薬品の榎本社長は、現役のアレルギー専門医であり、また小児科専門医としてアレルゲンを必要な量だけ手軽に経口摂取できる加工食品があればご家族の負担も軽減でき、コンプライアンス(服用遵守)の向上にもつながると、以前より考えておりました。

そして2018年、神戸医療産業都市にある中央市民病院と県立こども病院が協力を約束し、さらに2病院1大学を加えてコンソーシアム(共同事業体)を結成。「研究開発助成金制度」(*)の支援も受けて、本格的な商品の研究開発がスタートしました。

「私自身、子どもの頃、アレルギーに苦しんだ経験があります。だから子どもたちの気持ちがよく分かるし、何とかしたいという想いが人一倍強かった。そしていまもたくさんのお子さんがアレルギーで困っている。それが商品開発をあきらめなかった理由です。」(榎本氏)

*研究開発助成金制度:神戸医療産業都市に集積した企業や研究機関・大学、医療機関などの連携融合を一層強化し、新たなイノベーションの創出を促進するため、創設20周年にあたる2018年に創設された助成制度。

STORY 02

神戸医療産業都市を舞台につながる人と人

プロジェクトの母体となるコンソーシアムは、榎本薬品、中央市民病院、県立こども病院に加え、榎本社長が外来診療にあたる社会医療法人愛仁会高槻病院、さらに千船病院、別府大学からなるチームで動いています。独力での開発ではなく、複数の医療機関、アカデミアを集めたコンソーシアムでの共同開発を選択したのは、多様な意見やアイデアが欠かせないと判断したからです。

「アレルギーの治療は、医療機関によって多少の違いがあります。多くの病院で利用される汎用性の高いものにするには、多くの方の協力を得て、幅広い意見やアイデアを集約していく必要があると感じていました。」(榎本氏)

構想が大きく前進したのは、中央市民病院と県立こども病院の小児科の先生方が榎本社長の思いやビジョンに共感し、進んで協力を約束してくれたことでした。

「お会いするのは初めてでしたが、『ぜひ一緒にやりましょう』と快く応じてくださいました。同じ小児科医として問題意識を共有できたからでもありましたが、組織の壁を越えた支援の表明に、『オープンマインド』を掲げる神戸医療産業都市ならではのワクにとらわれない自由な気風を強く感じました。」(榎本氏)

榎本社長はまた、学会活動などを通じて交流のある小児科医にも協力を呼びかけ、情報の提供や助言を行なうアドバイザリーボードメンバーを集めました。メンバーは、大学病院や国立病院、クリニックの小児科医を中心に約20名でいまも増えています。所属する組織が違えば、日頃活動する地域も一人ひとり違います。

「私のような一医師、一民間企業の経営者が、さまざまなワクを超えて多くの方のご協力を得られたのは、神戸医療産業都市に横溢するオープンな風土、何にも増して日本最大級の医療産業クラスターからの支援があるという信頼感があったから。私ひとりの力で、ここまでたどり着けることはまったくできなかったと思います。」(榎本氏)

STORY 03

たったひとつの志を胸に

多くの人のサポートを得て、商品開発は急ピッチで進んでいます。日頃はメールとWebで情報共有と意見交換。定例のミーティングで議論を深めてサンプルを試作し、それを評価してさらに改良を加えていきます。

「今後半年をメドに最終仕様を決定し、臨床でのテストを経て、2020年の3月までにはカタチにしたいと思っています。」(榎本氏)

榎本社長が、商品開発に乗り出すことを最初に決断したのは2018年5月。コンソーシアムを立ち上げたのが、その2ヶ月後。それからというもの、プロジェクトは異例ともいえる早さで進んできました。それを支えてきたのが、榎本社長をはじめとする関係者の強い想いです。

「コンソーシアムの最初の会議では、『食物アレルギーの子どもたちと、そのご家族に貢献する』というビジョンを明確にしました。日頃時間に追われながら仕事をしていると、ともすれば初心を見失いがち。その度にビジョンを振り返ることにしています。商品開発には、社内外からワクを超えて多くの方が集まっています。でも志はひとつだけ。それを結びつけているのは、神戸医療産業都市というステージです。」(榎本氏)

連携図

連携図

PROJECT LEADERプロジェクトリーダー

榎本薬品株式会社 代表取締役社長
医学博士・小児科専門医・アレルギー専門医

榎本 真宏

神戸大学医学部博士課程修了。小児アレルギー、新生児分野の臨床専門医として第一線で活躍する一方、神戸大学医学部附属病院小児科やカナダのトロント小児病院などを拠点に小児医学研究分野で優れた業績を上げ、数々の表彰を受ける。2017年から現職。いまも愛仁会高槻病院小児科のアレルギー専門外来やNICUで診療にあたる。